2019 鮎川「風の部屋」
風と言葉の関係について。
それは彼女が導いてくれた発見でした。
彼女の話す言葉は、まるで風がすーっと吹いている丘にいるような気持ち良さがあります。言葉がすとんとその人の中に入って、停滞することなくすみやかにからだを通り、羽ばたいていく。きっとこの方は言葉に好かれているのだろうなと感じながら、わたしはいつも、風の吹く丘で目を閉じて、深呼吸をするように、彼女の言葉を読んだり聞いたりしています。
彼女は基本的に反応が速く、連絡もまめだったり、なにか、おや?と空間が歪むような時も見過ごさずに気がつく。日に焼けるのもはやい。そして、意見をはっきり言う。誰かにとってそれがたとえ耳が痛いことでも、恐れずにまっすぐ伝えるので、確実に、そして深い場所まで届き、理解される。わたしも仕事のことで彼女に何度か「青葉さんそれは違うと思う」と言ってもらったことがあり、その時は腕を顔の前にかまえるような、強い風のように感じるけれど、あとから振り返ると、そうやって強い風を当ててくれたおかげで、とてもすっきりと、あたりがお掃除されている。丘の上に何日もとどまっていた霧がぱあっと晴れたような、潔い風。そして、空気の流れが良くなっていることに気がつくのです。
彼女を通る言葉たちを体験して、ああ、言葉は風が好きなんだ。と感じられるようになりました。言葉は風の吹くところに流れてゆき、情報を運んでまわる。その役目をしているときの彼女は、透明なイメージがして、彼女自身が話している、というよりは、彼女が筒のようになって、ぱくぱく口を開閉して、風と言葉たちを届けているような印象です。
言葉は風に正直、
そして言葉は心地よく風を通せる人のことが好き。
彼女が導いてくれた、ちかごろの発見でした。